空気を読めよ・・・私は昔から空気をよむのが苦手というより、逆に空気をぶち壊すのが得意である。ふだんはなんとか大丈夫なのだが、酒が入るとうまく調整ができなくなってしまう。酒席での失敗をしてきた人にはわかるだろうが、ふだんはかなりの不満をためこんでいる。人の何倍も何倍も。酒の勢いでそれがロケット噴射するのだ。恐るべきロケット燃料。
酒飲みの口癖は「自分は酔っていない。まだ大丈夫だ」「明日は休肝日にしよう」・・・挙句の果ては「もう禁酒する」。そんなところだろう。ところがどっこいアルコールというのは合法的な依存薬物である。そんなに簡単に絶てるものではない。テレビをつければ数本に一本はアルコール飲料のコマーシャルである。町のコンビニでは24時間アルコールが手にはいる。そんな環境でどうやって酒を断つ?
精神科の外来では抗酒薬というジャンルの薬がかなり昔から使われてきた。事前に服用することで、人為的に極度の下戸を作り出すのだ。下手をすれば洋菓子に含まれている微量のアルコールでさえ吐き気を催すほどの効果がある。一見するとこれはとても効果がありそうな治療薬であるが、結局は服用しなくなる。理由は明快、あまりにも劇薬すぎて恐ろしくて飲めないのだ。
数年前から断酒した人向けに、断酒の意思を継続するための断酒補助薬なるものもひろく出まわるようになった。これはアルコールを少量でも飲み続けている人たちにとっては、ほとんど効果はないといっていい。あくまでも断酒していることが大前提なのだ。医師によっては減酒の気やすめとしてこれを処方する場合もあるが減酒効果はない。
最近はとうとう減酒薬なるものまで登場してきた。節酒ができるというのがうたい文句であるが、これはすべての精神科、心療内科医が処方できるわけではなく、アルコールの専門医を標ぼうするもの、または専門の講習を受けた医師でなければ処方できない。処方はしてあげたいけれど、講習をうけてないから申し訳ないと言い続けている先生も知り合いにいる。
結局、アルコールをやめる方法は何か。一時的にやめるならばまず入院することだ。問題行動をおこすようであれば迷っている余地はない。お勧めは入院の一択だ。断言しよう。自力でアルコールをやめることは絶対に不可能だ。
しかし、退院後どうやって断酒を続けていくか。それはあなた次第である。断酒会やA.Aなどに所属して体験者と話を共有するのもいいだろう。仲間がいれば脱落の確立は多少、低くなる。が、最後は自分の意志の力であるのは間違いない。元の道に戻ることは恐ろしくたやすい。赤子の手をひねるよりもはるかにたやすい。
アルコールは超依存性のある完全合法薬物であるのだ。もちろん適度にたしなめているうちはもちろんいいだろう。「酒は百薬の長」なのだから。しかし、一線を越えてしまうことが続くようになったときから、長い長い闘いが始まる。
そしてそれはどこでも簡単に手に入る。あなたは生きている限りそれを我慢しつづけなければいけない。精神的な渇望と肉体的な渇望と。そしてこの闘いは肉体が滅びるまで永遠に続くのだ。
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