おっさんと銃 ~4章 初陣編~

Fフラッグに続々と集まる武装集団。思い思いの銃と装備を身にまとう非日常の風景についつい高揚してしまう。重くて硬そうなヘルメットと防弾ベストらしきものを身に付けた人もいるが、一発でも撃たれたらアウトな事に変わりはないらしい。

じゃあなんでわざわざ着るんですか?と上司に問うと、ベストはプレートキャリアって言って、予備のマガジンなんかも付けられるのよ。何より・・・カッコいいだろぉ!?という返答だった。な、なるほど!

スタッフさんによるルール説明が始まった。初戦はカウンター戦というルールらしい。撃たれたら自陣のフラッグに戻ってカウンターをカチッと一回押して再び戦い、タイムアップした時にカウンターを押した回数が少ない陣営が勝利とのこと。時間いっぱい戦えるステキルールだ。

更にフルオートはルールによって禁止の場合もあるが、今回は解禁だそうだ。上司曰く、モンスター映画にありそうな「うわあああ!来るな!来るなあああ!」と叫びつつ弾をばらまくのも乙なものよ、とのこと。やられ役じゃないすかもー。

スタッフさんの合図で、ついに戦闘が始まった!

途端に数名が駆け出し、十数m先の障害物に身を隠した。すげー、あれが上級者ですか?と上司に問うと、経験も若さもある人達はああやって有利なポジションを確保して戦うのよ、とのこと。有利なポジションとかあるんだ・・・全くわからん・・・。

俺たちおっさんはのんびり行こう、と迂回路を提案され、何もわからないまま従・・・

「ヒットー!」の声!うそ、もう戦ってる!?

アタフタしてたら既に上司や相方さんは一人隠れるのがやっとのバリケードに身を隠していた。こ、ここからは一人か!

とりあえず自分も手近なバリケードに身を隠す。障害物もそうだが、草木が多くて何が敵なのかが全くわからない。動くものが敵、と言うにも風に揺れる草木がそれを許してくれない。

ビクビクしながら回りを見回すと、みんな同じ方向に銃を構え、その方向にバリケード間を渡りながら進んで行く。あ、あっちに敵がいるって事か・・・!

開始前までゲームだろうとタカを括っていたが、この緊張感は戦いのそれだ。多人数vs多人数という未知への恐怖もあったが、それ以上に戦って勝ちたいという意欲が湧いてきた。

よ、よしあのバリケードには行けそうだな・・・南無三!と祈りながら中腰で飛び込む。ここなら大丈夫だろうと周囲を見回していると、「そこ!射線通ってる!」との上司の声。

へ?敵なんてどこにも・・・と、ついその場で周りを見回していると、右耳に痛みが走る!痛ったぁ・・・!

レンタル防具は顔面のみ、むき出しの耳の痛みをこらえつつ、手を挙げて「ヒットー!」と宣言。ションボリしながら引き返す。上司の「ナイスヒットコール!」の声に気恥ずかしさと不甲斐なさを感じた。うう、かたき討ち頼んます・・・!

右も左も分からないまま進んできたため、元居たFフラッグを探すのも一苦労(方向オンチ)であったが、同じく撃たれた人の後を付いて行って何とか見つけた。先の人が「そちらの分も押しときますねー!」と明るく声を掛けてくれた。うーん、やっぱり戦いじゃなく健全なスポーツの気配。

とはいえ、やられっぱなしは悔しい!一矢報いるべく前線のみんなに追いつき、手近なバリケードに身を隠す。

さっきはのんびり見回してたからダメだったんだ、今度はちょっと敵を探したらすぐ隠れる様に・・・その瞬間バリケードにバチバチと弾がぶち当たる音!あっぶね!

なんか知らんけどあの辺か!?と咄嗟に撃ち返す!遠くのバリケードで弾が弾ける音が聞こえたのみであったが、興奮が隠せなかった。今、俺戦ってるんだ・・・!

そのまま時折顔を出しては撃ち込まれ、同じ相手と思われる位置に撃ち込む応酬が続いた。一瞬すら長く感じられる時間であったが、「ヒット!」の声と共に銃声が止んだ。あれ?今隠れてたから撃ってないぞ!?

困惑しながら周りを見てみると、バリケードに隠れた味方数人が一斉に動き始めた。もしかして戦ってる隙に誰かが倒してくれたのか・・・!?

役に立てた!という高揚感の中、コソコソと進む。昔FPSゲームの記事かなにかで見た覚えがあるが、撃ち合いは陣取りゲームの様なもの、前線を押し上げる事と撃たれない事が大事という意見があった。撃つのがヘタでも、オトリになる事は可能だし、誰かがオトリになってくれればきっと自分にもチャンスが回ってくる・・・!

かと言って一人でグイグイ進んだら囲まれてハチの巣だ。どうにか他の人と相互に役立てる位置に行きたい・・・という一念で、ベテランさん達の後や横をコソコソ付いて回る。

数十m先の物陰からチラッと覗いてくる相手なんて全く分からないのに、他のみんなは把握している様子だ。悔しいな・・・スコープ付きの銃とかなら分かるのか・・・?うう、いくらするんだろう。

そうしてコソコソしていたら、スタッフさんの合図でタイムアップとなった。結局誰にも当てられなかったか・・・ぐぬぬ。

ションボリしつつ他の人に続いてセーフティへ戻ると、上司と相方さんがどうだったー?と声を掛けてくれた。やー1回撃たれただけで終わっちゃいました、現実は甘くないですねーと言うと、最初は誰でもそんなもんだよとのお答え。みんな戦える様になるまでどれだけ掛ったんだろう?

不意にスタッフさんの拡声器越しの声が響き、今回のゲームは黄色陣営が勝利した事を伝えた。我々の勝利だ・・・!!何もしてないけどね。

こうして撃ち合いには負けたものの、試合には勝てたのだ。滑り出しは上々と言えるんじゃないだろうか。

何気なく休憩中の他のテントを見渡す。赤陣営も黄色陣営も無邪気に語り合い、お茶を飲み、銃の手入れをしている。心地よい疲労感を感じながら、なんとなく学生時代の運動会を思い出していた。

次回!

おっさんと銃 ~5章 激闘編~

サバゲー、それは楽しんだ者こそが勝者なのである。

続く。

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